1. 疾患に関わるエピゲノム異常の同定と治療法の開発
エピゲノムには環境要因にどれだけ曝露されたかという経験が記憶されており、将来の疾患に繋がることが知られています。私達は、エピゲノム変化を誘発する環境要因の同定と分子機構、疾患発症に繋がる機構の解明を行っています。また、疾患に関わるエピゲノム変化を標的とし、細胞運命の正常化を目指した治療法の開発も行っています。
2. 脂肪酸代謝による細胞膜変化を介した薬剤感受性機構の解明
細胞膜タンパク質は、細胞外からのシグナルを細胞の性質に変換する重要な役割を担っています。また、膜受容体の標的薬は、がん薬物療法の中心となっています。私達は、膜受容体HER2に対する標的薬の感受性に、脂肪酸代謝酵素が関与していることを見出し、その分子機構の一部を明らかにしました。現在は、脂肪酸代謝によるがん細胞の細胞膜組成の変化と膜受容体標的薬の感受性への影響の解析を行なっています。
3. アレルギー反応の新奇病態生理の解明
日本人の約半数が罹患するアレルギー疾の病態生理は、未だ十分には解明されていません。私達は、これまでに、新奇アレルギー制御因子としてRab27エフェクター蛋白質Exophilin-5やMunc13-4を同定し、アレルギー性炎症を増強させるIL-5がごく一部のTh細胞から産生されることを明らかにしました。現在は、アレルギー病態の更なる理解を目指し、マウス喘息モデルや各種遺伝子改変マウスを用いた解析を行っています。
4. 肥満・糖尿病の新奇病態生理の解明
私達は、脂肪組織中のCD11c+マクロファージから分泌されたGDF3が脂肪細胞上の受容体ALK7を活性化して脂肪蓄積を亢進させることや、炎症性サイトカイン-GDF3-ALK7を介した、肥満を促進させるポジティブループの存在を明らかにしました。現在は、GDF3-ALK7経路を中心とした脂肪蓄積制御機構で免疫系が果たす役割の詳細を解明すべく、マウス肥満・糖尿病モデルや各種遺伝子変異マウスを用いた解析を行っています。